VOCA展2008シンポジウム 『輪郭なき時代の絵画』
チビルダミチルダのレビューが書きかけであるし、VOCAも全作品きちんとは見ていないので、多くは書きません。しかし、じゃあ何故記事を書くかといったら、シンポジウムが面白かったから。
酒井忠康を除く選考委員5名、高階秀爾、建畠晢、本江邦夫、逢坂恵理子、南嶌宏というそうそうたる顔ぶれ。平面作品というVOCA展の縛りから、映像・写真との対比を手がかりに絵画という形のありようが議論され、作品を絡めて話すにあたって客席の作家、推薦者からも言葉が出て、なかなか勉強になりました。
絵画うんぬんという本題の部分とはずれるけれど、作家はいくら口下手でもいいのですよ。良いものをつくる人は、作品に対して、体力と精神力と時間を注いでいる。つまり命を懸けているんだから。
ですから、それを取り上げて語ることを職とするなら、命を懸けて書かなくてはなりません。
それができないうちは、どんな作家に対しても一瞬たりとも驕ってはならないと思います。
カタログなど読んでいると、学芸員が寝不足で仕上げた文章には目を覆ってしまいたくなります。
しかしいざ自分が言葉を紡ごうとすると、これが途端に、その学芸員と同じ向きへ筆が流れようとするんですよね。かじった程度の異なる分野の言葉の引用とか、巨匠との対比とか、安易にそういう「もっともらしさ、確からしさ」に流れていってしまう。
作品を良いと感じたとき、理由を言語化する必要は無いし、それは不可能です。そこにわざわざ立ち向かって橋渡しをしようとするんだから、至らないのも当たり前で、たとえ至らないとしても、何よりも作品をよく見て、作品の周辺(作家、作家の過去の作品など)を見なくては。
よく考証せず、ぱっと連想した哲学者の文章なんか引用するなんて最低の行いです。
連想は核心へと至るきっかけではあるでしょう。私も連想のかたまりですし、秘密の日記レベルでそれを書き連ねています。しかし、そういうことばかり繰り返した時、本当のことが「見える」人間が出来上がるんでしょうか。
ただ食べることの快楽に酔い、誤りという余分どころか有害な脂肪をどんどんつけていくにつれ、フットワークは落ちていく。さらには歯磨きも怠ってしまったりして、味覚も麻痺し、咀嚼すべき歯もぼろぼろに。
そういう経過を経て、作品を見ただけで分かる、という気になってしまうのは、悲しいことです。
以上、自戒の意味を込めて。
『VOCA展 2008』
会場: 上野の森美術館
スケジュール: 2008年03月14日 〜 2008年03月30日
金曜日のみ19:00閉館。会期中無休
住所: 〒110-0007 東京都台東区上野公園1−2
電話: 03-3833-4191
酒井忠康を除く選考委員5名、高階秀爾、建畠晢、本江邦夫、逢坂恵理子、南嶌宏というそうそうたる顔ぶれ。平面作品というVOCA展の縛りから、映像・写真との対比を手がかりに絵画という形のありようが議論され、作品を絡めて話すにあたって客席の作家、推薦者からも言葉が出て、なかなか勉強になりました。
絵画うんぬんという本題の部分とはずれるけれど、作家はいくら口下手でもいいのですよ。良いものをつくる人は、作品に対して、体力と精神力と時間を注いでいる。つまり命を懸けているんだから。
ですから、それを取り上げて語ることを職とするなら、命を懸けて書かなくてはなりません。
それができないうちは、どんな作家に対しても一瞬たりとも驕ってはならないと思います。
カタログなど読んでいると、学芸員が寝不足で仕上げた文章には目を覆ってしまいたくなります。
しかしいざ自分が言葉を紡ごうとすると、これが途端に、その学芸員と同じ向きへ筆が流れようとするんですよね。かじった程度の異なる分野の言葉の引用とか、巨匠との対比とか、安易にそういう「もっともらしさ、確からしさ」に流れていってしまう。
作品を良いと感じたとき、理由を言語化する必要は無いし、それは不可能です。そこにわざわざ立ち向かって橋渡しをしようとするんだから、至らないのも当たり前で、たとえ至らないとしても、何よりも作品をよく見て、作品の周辺(作家、作家の過去の作品など)を見なくては。
よく考証せず、ぱっと連想した哲学者の文章なんか引用するなんて最低の行いです。
連想は核心へと至るきっかけではあるでしょう。私も連想のかたまりですし、秘密の日記レベルでそれを書き連ねています。しかし、そういうことばかり繰り返した時、本当のことが「見える」人間が出来上がるんでしょうか。
ただ食べることの快楽に酔い、誤りという余分どころか有害な脂肪をどんどんつけていくにつれ、フットワークは落ちていく。さらには歯磨きも怠ってしまったりして、味覚も麻痺し、咀嚼すべき歯もぼろぼろに。
そういう経過を経て、作品を見ただけで分かる、という気になってしまうのは、悲しいことです。
以上、自戒の意味を込めて。
『VOCA展 2008』
会場: 上野の森美術館
スケジュール: 2008年03月14日 〜 2008年03月30日
金曜日のみ19:00閉館。会期中無休
住所: 〒110-0007 東京都台東区上野公園1−2
電話: 03-3833-4191
[予告] ネグリさんとデングリ対話@東京芸大・上野
トニ・ネグリが芸大にやってくるらしい。木幡和枝さんらしいな、と思う。以前から気になっていたので、これを機に『芸術とマルチチュード』を買おうかと思ったけど、Amazonでは売り切れていた。
このひと別にアート畑の人じゃないですよね。
美学美術史をやるにあたって出会ってゆく研究者って、哲学者であったり経済学者であったり科学者であったりする。面白いけどハードです。
とか思っていたら、東大でも対談するらしい。パネラーは姜尚中と上野千鶴子。面白そう。
そうそう、ただの来日つながりだけど、5月にスティーブ・ライヒが来るそうだ。聴きたいには聴きたい。
ベンヤミン読もうっと。
このひと別にアート畑の人じゃないですよね。
美学美術史をやるにあたって出会ってゆく研究者って、哲学者であったり経済学者であったり科学者であったりする。面白いけどハードです。
とか思っていたら、東大でも対談するらしい。パネラーは姜尚中と上野千鶴子。面白そう。
そうそう、ただの来日つながりだけど、5月にスティーブ・ライヒが来るそうだ。聴きたいには聴きたい。
ベンヤミン読もうっと。
うつゆみこの毒キノコワールド
15日、写真家のうつゆみこさんと飯沢耕太郎先生の対談(特別講義)を聞きに赤レンガ棟へ。
ちなみに、私の誕生日でした。誕生日に毒キノコなんて。と、少し思いましたが、きのこ好きだし、飯沢さんのお話を聴いてみたかったので覗いてみました。
気持ち悪いけど、きれい。気持ち悪いけど、かわいい。
レトロな玩具やチープな土産物、昆虫や植物や魚介類、変な柄の包装紙、図鑑の写真などを組み合わせて撮るうつさんの写真の世界は、子供がおっかなびっくり触れて喜ぶそのままの世界でした。色と形への日々の油断なきこだわりが結実していました。とても好きです。ここからもう一歩、どう変わっていくのか気になります。
飯沢さんはきのこが絡むせいか、うつさん御本人が癒し系であるせいか、何だか終始和やかに楽しげになさっていました。うつさんの作品に、これいいね、これもいいね、そろそろ飽きた、とか言っていました。
なんと写美にも行ったことがなく、写真に相当疎い私としては、専門的なことはほとんど理解できずじまいでしたが、地に足がついた、それでいて間断なく日常を注視し、写真に心血を注ぐうつさん(でも天然)の、ぎっしり詰まった言葉に、敬虔な気持ちになりました。いつものことですけど。
ちなみに、私の誕生日でした。誕生日に毒キノコなんて。と、少し思いましたが、きのこ好きだし、飯沢さんのお話を聴いてみたかったので覗いてみました。
気持ち悪いけど、きれい。気持ち悪いけど、かわいい。
レトロな玩具やチープな土産物、昆虫や植物や魚介類、変な柄の包装紙、図鑑の写真などを組み合わせて撮るうつさんの写真の世界は、子供がおっかなびっくり触れて喜ぶそのままの世界でした。色と形への日々の油断なきこだわりが結実していました。とても好きです。ここからもう一歩、どう変わっていくのか気になります。
飯沢さんはきのこが絡むせいか、うつさん御本人が癒し系であるせいか、何だか終始和やかに楽しげになさっていました。うつさんの作品に、これいいね、これもいいね、そろそろ飽きた、とか言っていました。
なんと写美にも行ったことがなく、写真に相当疎い私としては、専門的なことはほとんど理解できずじまいでしたが、地に足がついた、それでいて間断なく日常を注視し、写真に心血を注ぐうつさん(でも天然)の、ぎっしり詰まった言葉に、敬虔な気持ちになりました。いつものことですけど。
「六本木クロッシング2007:未来への脈動」展 パネルディスカッション「クロストーク2007」
2004年。森美術館が開館の年に仕掛けた、「六本木クロッシング:日本美術の新しい展望2004」展。
若手現代美術作家の紹介ということで、57組のクリエイターが六本木に集結しました。
2007年、今回は二度目。トリエンナーレとしてはまだまだ駆け出しです。
森美術館はこの三年で、現代美術を扱う美術館として相当に希少かつ固有の地位を獲得しました。その期間中ずっと温められてきた試みですから、見逃せないわけです。
で。
六本木ヒルズには行ったのに「六本木クロッシング2007:未来への脈動」展は、未見です。
今回は、この企画に関連して行われたパブリックプログラム「クロストーク2007」に行ってきました。
パネラーは、今回キュレーションを担当した以下四名。
荒木夏実(森美術館キュレーター)天野一夫(美術評論家・京都造形芸術大学教授)佐藤直樹(ASYLアートディレクター)椹木野衣(美術評論家)です。
私のお目当ては椹木野衣さん。『爆心地の美術』を読んで、どんな方なのか非常に興味がありました。
プレゼンテーションとディスカッションを聴いての感想。
四人の経験と人脈(というより「過去に一緒に仕事をした」人々)から生まれた、それぞれの『クロッシング』を巧妙にミックス(あるいは、これもまたクロッシング)している。
展覧会というからには、作品やアーティストの配置による一本道があるわけですが、そこにテーマや縛りを設けるのではなく、様々な視点の提示を導線で魅せているのだと言えます。
それは、大上段で掲げる文言としては素敵なことです。
しかし、実態として、各人が持っているはずの『クロッシング』観がコミュニケートせず、実にあいまいに散逸しているのが、ちょっと気にかかってしまいました。
「魅せ方」であるキュレーション自体はきっと良いのです。これだけの実力者揃いで悪いはずがない。歩く度わくわくするような展覧会に仕上がっていることでしょう。
ただし、互いの思想的な部分について、我関せずというか「皆違って皆良い」的な会話の仕方をしている四人を見ると、いったい深く突っ込む時間が取れていたのか、疑問です。
アーティストのチョイスについて、ぱきっと明確な語り口を持っていたのはやはり椹木さん。
榎忠、吉村芳生、名和晃平、関口敦仁。各人について、今引っ張ってくるべき理由を彼らしい一貫した視点で説明していました。彼の発言の核は「日本の現代アートに文脈などない」ということでしたが、だからといって言葉を投げ出してしまわず、現状から受け止めていく姿勢に好感を持ちました。
対照的に、少しキャパシティーの浅い選択に見えたのは荒木さん。
ペンキ絵師の丸山清人、人形作家で状況劇場の女形でもあった四谷シモン、今回小説をインスタレーションに還元した眞島竜男など、どのアーティストもクロッシングという単語にはかっちり填まっています。
ただ、彼らは孤島のようにあるだけで、鑑賞者や場所に対する存在感、クロッシングの意識はあっても、作品同士の磁場が生まれていない。そこに荒木さん固有の基盤がもう少し絡んでほしかったな。
アーティストの選択という意味では相当面白く、私にとっても見たかった・見たいと思わされる人たちですので、結局は無条件に楽しみです。
アーティストとキュレーター、クロッシング展と自分、自分と他者、たくさんの関係にどのようなクロスが生まれるか、期待しています。
『「六本木クロッシング2007:未来への脈動」展』
会場: 森美術館
スケジュール: 2007年10月13日 〜 2008年01月14日
12月25日(火)、1月1日(火)は22:00まで
住所: 〒106-6150 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 53F
電話: 03-5777-8600
若手現代美術作家の紹介ということで、57組のクリエイターが六本木に集結しました。
2007年、今回は二度目。トリエンナーレとしてはまだまだ駆け出しです。
森美術館はこの三年で、現代美術を扱う美術館として相当に希少かつ固有の地位を獲得しました。その期間中ずっと温められてきた試みですから、見逃せないわけです。
で。
六本木ヒルズには行ったのに「六本木クロッシング2007:未来への脈動」展は、未見です。
今回は、この企画に関連して行われたパブリックプログラム「クロストーク2007」に行ってきました。
パネラーは、今回キュレーションを担当した以下四名。
荒木夏実(森美術館キュレーター)天野一夫(美術評論家・京都造形芸術大学教授)佐藤直樹(ASYLアートディレクター)椹木野衣(美術評論家)です。
私のお目当ては椹木野衣さん。『爆心地の美術』を読んで、どんな方なのか非常に興味がありました。
プレゼンテーションとディスカッションを聴いての感想。
四人の経験と人脈(というより「過去に一緒に仕事をした」人々)から生まれた、それぞれの『クロッシング』を巧妙にミックス(あるいは、これもまたクロッシング)している。
展覧会というからには、作品やアーティストの配置による一本道があるわけですが、そこにテーマや縛りを設けるのではなく、様々な視点の提示を導線で魅せているのだと言えます。
それは、大上段で掲げる文言としては素敵なことです。
しかし、実態として、各人が持っているはずの『クロッシング』観がコミュニケートせず、実にあいまいに散逸しているのが、ちょっと気にかかってしまいました。
「魅せ方」であるキュレーション自体はきっと良いのです。これだけの実力者揃いで悪いはずがない。歩く度わくわくするような展覧会に仕上がっていることでしょう。
ただし、互いの思想的な部分について、我関せずというか「皆違って皆良い」的な会話の仕方をしている四人を見ると、いったい深く突っ込む時間が取れていたのか、疑問です。
アーティストのチョイスについて、ぱきっと明確な語り口を持っていたのはやはり椹木さん。
榎忠、吉村芳生、名和晃平、関口敦仁。各人について、今引っ張ってくるべき理由を彼らしい一貫した視点で説明していました。彼の発言の核は「日本の現代アートに文脈などない」ということでしたが、だからといって言葉を投げ出してしまわず、現状から受け止めていく姿勢に好感を持ちました。
対照的に、少しキャパシティーの浅い選択に見えたのは荒木さん。
ペンキ絵師の丸山清人、人形作家で状況劇場の女形でもあった四谷シモン、今回小説をインスタレーションに還元した眞島竜男など、どのアーティストもクロッシングという単語にはかっちり填まっています。
ただ、彼らは孤島のようにあるだけで、鑑賞者や場所に対する存在感、クロッシングの意識はあっても、作品同士の磁場が生まれていない。そこに荒木さん固有の基盤がもう少し絡んでほしかったな。
アーティストの選択という意味では相当面白く、私にとっても見たかった・見たいと思わされる人たちですので、結局は無条件に楽しみです。
アーティストとキュレーター、クロッシング展と自分、自分と他者、たくさんの関係にどのようなクロスが生まれるか、期待しています。
『「六本木クロッシング2007:未来への脈動」展』
会場: 森美術館
スケジュール: 2007年10月13日 〜 2008年01月14日
12月25日(火)、1月1日(火)は22:00まで
住所: 〒106-6150 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 53F
電話: 03-5777-8600



