美術館・画廊・書籍メモ

行ってきた展覧会・読んだ本などの記録です。気が向いた時、気が向いた分書いています。 同じ展覧会に行った方、そうでない方も、お気軽にコメント・トラックバックしてください。

「金刀比羅宮 書院の美」展

金刀比羅宮

一言でいうと、こんぴらさんをまるごと持ってこよう!という展覧会。

金刀比羅宮の襖約130点を持ち込み、あちらの建築をそのまま再現。
薄い両面のガラスケースに襖をはめてずらりと並べたり、柱を建て畳を敷き、完全に部屋状にしたり。
前者は本当に襖だけで、表裏を観察したり、部屋と部屋の間を自由に行き来できます。後者は流石に立ち入ることはできませんが、まるで本当に拝観しているように覗き込むことが出来ます。

応挙・岸岱・若冲と、見所はたくさん。
洒脱な筆致と、的確な表現力を併せ持つ応挙の《遊虎図》は流石。
岸岱の《水辺柳樹白鷺図》も、柳の幹の輪郭をえぐる太い描線と、これでもかというほどに繁った葉のボリュームが、かなりの迫力を持って映りました。

明治35年制作の、邨田丹陵による《富士二の間》も良かった。
襖の下の下に、はるかに霞む遠景を見せる。なにか、入ってすぐにふっと空気が変わり、心が運ばれてゆくような心地よさを感じられます。
壁面の再現にはキャノンのプリントを使っているそう。一見しただけでは複製とは分かりません。見事なものです。

全体を見回すに、襖絵を観察するのには非常に有効な展示形態だったと感じます。
寺社を訪問した時のはっとするような緊張感、特有のテリトリーを再現するには残念ながら及ばず、ホワイトキューブ(的な空間性)の介在する違和感は拭えませんでしたが、大きなガラスケースに収められた「平面の」襖をぼうっと眺めさせるよりは、はるかに鑑賞者に対する引力を持った展示だったと思います。


同時に、歌川広重「“名所江戸百景”の全て」展も開催中。
誰もが知る《名所江戸百景》120枚全てを、一点一点細やかなキャプションをつけて展示しています。
こういうものは出し惜しみされることが多い中、非常に有意義な試みだと思います。
ジャポニズムと関連付けての広重とゴッホ・ゴーギャンとの比較も、非常に皆さんの関心を引いていたようです。


9月9日まで。


「金刀比羅宮 書院の美」展
会場: 東京藝術大学 大学美術館・陳列館
スケジュール: 2007年07月07日 〜 2007年09月09日
休館日: 月曜日(ただし7月16日、8月27日は開館)、7月17日(火)、8月25日(土)
住所: 〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8
電話: 03-5685-7755

『美術の解剖学講義』 森村泰昌著

面白いアーティストのこねる芸術論は、やっぱり面白い。
……と、いうのは定説ですが。

森村さんに関しては、面白い面白くない以前に、あんまり先入観が無いんです。
恥ずかしながら、あまり彼を扱った批評を読んだことが無かったから。知っていたのも、ハリウッド女優のシリーズや、セザンヌなどの名画シリーズ程度。実物をきちんと見た数は10に満たない。

で、この本。
『美術の解剖学講義』 森村泰昌

ものの数時間でさらっと読めてしまいます。文庫にもなっているみたい。

先程「アーティストの芸術論」と書きましたが、実際にアーティストの書くものは、大体が論というより主張です。
しかし、平凡だったり、時に突飛だったりする彼らの主張が、何故かすんなりと体に入ってくる。彼らが、いい意味で知識に毒されず、経験寄りに言葉を発するからでしょう。

手を動かしてつきとめた言葉は、頭で理解せずとも、体から伝わってきます。
こういう考え方はある時期からブームになりましたし、使い古されてきた頃だなぁとは思いますが。それでも頭でっかちな環境に慣れ、自分の手足で考えることを忘れた人、周囲に沢山居ます。
私も。忘れなければ、いいのですが、たまに、忘れてます。
ひと呼吸置くために、アーティストの言葉を聴くのも良いかもしれませんね。

『セザンヌとゾラ その芸術と友情』 新関公子著

集中講義が始まりました。
バイトもしてないのに、そんなこんなで八月は結構忙しいです。

今日のテーマはこれ。
『セザンヌとゾラ その芸術と友情』 新関公子著

私が印象派の勉強をしてみようと思ったのは、ひとえに「多くの日本人が印象派好きである」から、でした。日本を基点に思考展開している以上、同じ日本人が印象派大好き!な理由をある程度分かっておきたいと考えたんです。

そして、印象派の系譜から現れるセザンヌの存在は、私にとってなかなか理解し難いものでした。
ルノワール、モネの明るく華やかな色遣いは、いかにも日本人好みの「印象派」に違いありません。ピサロの温かみのある画風が受けるのは分かります。マネ・ドガはそもそも、他でもない私が好きな二人。
スーラ・ゴッホ・ゴーギャンも、分かる。彼らは少なくとも、明るい色彩を持っています。

しかしセザンヌは、暗く重い。
こってりと執拗な絵具の様子も、あの白いクロスの暗示的な皺も、物語的なテーマの分かり辛さも、とにかく暗い。
物質を自律的に再構築した、キュビズムの父、という手垢のついた評価も、実際彼の絵を前にした時、その感想を何ら肯定的にするものではありません。
私個人が必ずしも暗い絵が嫌いというわけではないのですが、なぜ印象派から彼が? という謎と、なぜ日本人に支持されるのだろう? という謎は長らく拭えませんでした。


さて。

この本の肝は、ゾラの書いた『作品(制作)』という小説を原因に二人が決別した、という、リウォルド以来の定説を否定し、セザンヌとゾラ、二人の友情は終生途絶えなかったとすること。
セザンヌはゾラをその慧眼で支え、ゾラはセザンヌを経済的にも精神的にも支えてきたと新関氏はいいます。

書簡の細かな言葉を再解釈してみせる手口や、ゾラが「30年ぶりに声を上げた」と自称した批評の背後にセザンヌを見るやり方は、一見真実らしく、ロマンが感じられます。
しかし、やや強引に「〜ではないだろうか。」「〜に違いない。」と言い切るばかりの文章が、確かな裏づけとなっているとは言い難い気もします。
むしろ、セザンヌとゾラの不和の原因を少女ジャンヌに求める尤もらしい議論を展開しながら、その後にヴォラールの言葉をとりあげ、彼の絶望的な言葉の裏をかきたがることは、自己矛盾の感すらあります。

「作品や書簡といった事実を読み取ることを重視した結果、セザンヌに関する著名論文の数々を読む余裕が無かった」と新関先生は述べています。私もまた先生の記述のみで、このような感想を書いていますので、明確な反論などできようもないのですが。

私にとっては、本の前半、印象派とセザンヌの歴史を、当時のゾラの批評を交えて紹介している部分が非常に役に立ちました。
印象派の面々による共同出資会社の成り立ちの説明や、サロンの古典派に対するゾラの酷評からは、印象派がどのように成長し、どのような立場を得ていたかが、よく理解できます。
それにしても、ウィットに富み説得力のあるゾラの美術批評(新関先生は、そこにセザンヌの目が感じられるといいます)には、舌を巻くばかりです。

またこの本の最終章では、ガイストの怪しすぎる提唱に基づいた暗喩的形状の発見と解釈のほかに、セザンヌ=ジャポニザンとする、浮世絵と比較しての論考が展開します。
セザンヌがジャポニズムの波を免れなかっただろうことには賛同しますが、もろに影響を受けて引用しているのだとまで言ってしまうのは、やっぱりロマンティック過ぎる気がします。それこそ実際の絵を見ても、セザンヌが浮世絵や水墨画の逆輸入だから好まれたのだ、というようには納得できない。

私としては、結局「日本人のセザンヌ好き」に対する答えは出ませんでした。そもそも、印象派っていうカテゴリーの系列だからもてはやされているだけなのかな。
でも、セザンヌ好きですよ。まだまだ考えなくてはならない相手だと思ってます。


新関先生、教えてもらったことがあります。
カタログくれたり、レセプションの招待券くれたり、おちゃめで若々しくて、とっても良い先生です。
横浜美術館のダリの大作を買ってくだすったのが彼女だと知った時は、感激のあまり踊りだしそうでした。

夏の思い出 そのいち(ドイツ・スイス)

今年の夏は、母とヨーロッパ旅行に行ってきました。
ドイツ、スイス、そしてパリ。(フランスはパリだけだったんです)
行く前には「ドイツとスイスって同じなんじゃない?」とまで思っていましたが、行ってみるとやっぱり、様々な発見がありました。

ドイツとスイスは、田舎町中心にまわってきました。

ドイツの街は、本当に綺麗。石畳の小道に、三角屋根の家並みが美しかったです。
屋根は、ぽってりとした煉瓦色。そして、壁はどれも白ではなくて、おいしそうなパステルカラー。
それも、窓枠の濃い緑や茶に合わせて、サーモンピンク、クリーム色、ミント色、水色、チョコレート色……。まるでパレットのように、色とりどりなんです。

そして驚いたのが、どの家の窓にも、満開の花壇があること。
なんでもドイツの人々は、お家のみだしなみに関して、お隣さん同士口うるさいよう。「お花が枯れてきているわよ」「あなた、そろそろ壁を塗り替えたら?」なんて、ざらだそうです。
田舎とはいえ、どこもお土産やさんが賑わう観光地。ゴミが落ちてないなんて、当たり前なのかもしれませんが……それでも、街の人が景観を率先して守っていることは確かなようです。すごいなぁ。

一方、スイスのすごさは、街より自然、でした。
終わりの見えない、白く荒々しい絶壁。見たこともない角度の狭間に、緑がしたたかに根を張っていました。
幾つも見た湖も、まるで鏡のように広がっていて、湖岸には少し大きな街があるんです。湖の周りには、日光浴を楽しむ街の人。湖面では、真っ白いヨットが風を切っていました。バカンスだから、お金持ちがいっぱい来てるんですな。

一番印象的だったのが、パラグライダーの数!
突き刺すような山々の、さらに高いところを舞うかのように、大空の青を悠々と飛んでいました。それが、一機や二機じゃない。カラフルなパラグライダーは、まるで赤や黄色の花びらのようでした。

ユングフラウやマッターホルンも見てきました!
ユングフラウは快晴。マッターホルンは、土砂降りの中絶景ポイントをハイキングしていたら、すーっと雲が晴れて。凍ったジェラートみたいな形でした。
富士山にも登ったことないけど、木も草も生えないあの高さはやみつきになりそう。

パリの話は、また後日。

挨拶

こんにちは。ユコです。
芸術学を学ぶ、絵の描けない芸大生です。

ブログ。
ブログ、してみたいかも。

長年手書きの日記は書いてるし、mixi退会の過去もある。
しかしながら、自分の関心事や行きたい場所をちゃちゃっとリンクしてまとめたり、ついでに自分の思ったことを項目立てして書ける、メモ帳(ネタ帳かも)のようなものが欲しくて。

サービスを調べ、立ち上げるまで、わずか5分。
便利な世の中ですね。

そういうわけで、引き出し整理と日々の感想によって綴られる小ネタ帳です。
どうぞ、なんなりと覗いていって下さい。

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ユコ

Author:ユコ
芸術学科所属、
日本美術史を専攻します。

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