美術館・画廊・書籍メモ

行ってきた展覧会・読んだ本などの記録です。気が向いた時、気が向いた分書いています。 同じ展覧会に行った方、そうでない方も、お気軽にコメント・トラックバックしてください。

康本雅子『チビルダ ミチルダ』(2)

 康本雅子『チビルダ ミチルダ』(1)はこちら。
 私はアナログの日記をつけていて『チビルダミチルダ』の内容と感想については、鑑賞したその日に長大なメモ書きを残している。
 ただ、私にとってダンスは異国の言語のようなものだ。その場で見てとった一瞬、一瞬を体系だてて記憶していくということが出来ない。それゆえに、康本雅子の踊り跳ねるあの時あの場所というものは、文字通り一期一会の「体験」であった。
 日記には、覚えている限り(相当いい加減な記憶をまじめに掘り起こした、という意味で)具体的に、愚直に物語の展開を綴った。踊り方ひとつとっても名前が分からないので、稚拙で恥ずかしいのだけど、ここに改めてまとめてみよう。


 ※ 以下、「子供」「魔物」といった表現は私が見た瞬間反射的に生み出した、もしくは後から考えた名づけであり、私個人のせまーい解釈によっています。


 車輪と紐(銀のモール)のついた小鹿のおもちゃを引き回す子供(康本・ジャージ姿)。そこに謎の大きな影(魔物)が現れる(康本・一人二役を演じる)。立ちはだかりゆらゆらと肩を揺らす魔物(両手の親指と人差し指を輪にし、ひっくり返してメガネにしている)に翻弄される子供。完全に毒され、同じように肩を揺らしだす。しばらくしてばたりと倒れ、両脚を大きくくねらせながら這って退場。

 男二名、女三名が登場。毛皮のベストにデニムという格好。うるさい音楽と下手のミラーボールの光にあわせ、明るく行進しては退場、行進しては退場(とても気味が悪い)。やがてきりきりと歌いだす。背後に康本が現れ、女の口を塞ぐ。女は絶叫する。以後、六人で踊るシーンののち、五名は退場。

 康本のソロ。民族風の激しい踊り。けっこうな長さがあったが、息をつく暇もない。途中座禅を組み、照明が星の光になってぐるんぐるんと回る場面がとてもかっこいい。

 康本は最後に舞台中央で仰臥し、「チク、タク、チク、タク」と言うとともに両手を床の上で上下させ始める。そこに、男女のウサギが登場(ピンクの兎の耳を被っている)。ウサギは康本を挟んで正座し、声に合わせて上体をシーソーのように動かす。時計と兎というと、自然と不思議の国のアリスが思い浮かぶ。童話的情景である。
 ウサギは康本のへそに興味を持ち、交互に人差し指で突っつき出す。最後に男女両方がすごい力で(というのは、腕をものすごく震わせているので)康本のへそを押す。康本の「チク、タク」が苦しげに途切れてゆく。「チク、タク、チク、タクッ……」。そして突如「ボォーン」。真顔ででんぐり返り正座。ウサギと顔を見合わせ、再度「ボォーン」で、でんぐり返る。この公演で一番笑えたシーンかもしれない。

 ここで音楽と照明が切り替わり、二匹のウサギが滑稽なダンス。

 さらに場面が変わって、リボンをつけた操り人形(女)とその操り手(男)が登場。男は人形の首筋に唇を寄せ、ものすごい勢いで吸い上げることで(その音は、ストローを吸う「チュー」どころではない間抜けさと破壊力だ)操っているらしい。このシーンもとても童話的であるが、先ほどより不気味さが増している。人形を操るにつれ男の生気は奪われていく。生命の奪い合いのような男女のやりとり。

 その後、最初の五名のうち出てきていなかったラスト一名の女性のソロ(私の目から見て、わりとまっとうなダンス。床ではウサギの男女が抱き合ってゆっくり転がっていたりする)。

 ここでまた全員出てきて踊るんだったか、忘れてしまった。
 康本(衣装は他五名と同じ、毛皮のベストにジーパン)ともう一人の女の子、二人が「しとしと」「ぴっちゃん」「しと」「ぴっちゃん」「しとぴっ」「ちゃん」と、交互にリズムよく繰り返す(他の人物は動きを止めている)。やがて女の子の方が康本に逆らって、合いの手をわざと抜かし始める。二人の声音は段々と険悪になっていき「しとしとぴっちゃんしとぴっちゃん、しとぴっちゃん」のリズムのままにいがみあいが起こる。掴みあったり腹部をぶつけ合ったり、動きのパターンを変えながら、「しとしと」も「びしょびしょ」に変わったりする。突然、動きを止めていた他四人が立ち上がり「ザー! ザー!」と大声を張り上げる。それに呼応して康本らは「ピカ! ドーン!」と、本当の雷雨よりはるかに騒々しく叫びまわる(康本の擬音と声だけが全体を通じて子供っぽいのは、意図してのことなのだろうか?)。

 場面が変わる(ここも記憶があやふや)。
 独裁者(あるいは魔物・モンスター?)のごとく場を支配する男一人。相変わらずピンクの耳をつけたままのウサギの男女(男の手下のように思える)。彼らは無表情のまま康本を捕まえようとする。康本も無表情だ。両手でメガネをつくり、魔物の影をつくることでウサギを威嚇する。捕まっては離れ、捕まっては離れというのを繰り返す。
 やがて康本は男女の頭からウサギの耳を引っこ抜く。途端に、場を支配していた男が苦しみだす。康本は舞台中央で客席に背を向けている。両手でピンクの耳をもてあそび、それが天罰のリモコンであるかのごとく男はのた打ち回る。


 暗転。


 舞台中央にちゃぶ台。狐の面をつけた男女五名が座っている。彼らは無言で盛り上がる。ちゃぶ台から離れ、客席左方へ集まって拍手。右方へ寄って拍手。観客はそれこそ狐につままれたような心地である。しばらく、居心地の悪い空気が流れる。

 ここで康本が登場。狐たちは散る。康本が油揚げをちゃぶ台に置くと同時に、彼女と油揚げを狙う五匹が踊り始める。全身をうならせて機関銃を撃つジェスチャーなど、ここもまた激しい。康本1vs狐5の構図が非常に分かりやすく、先ほどまでの気味の悪さは薄らぐ。
 最後、ぐったりした康本を尻目に男が油揚げをそっと口にくわえ、退場。

 暗転。

 舞台中央奥、低い金屏風を背景にちゃぶ台を挟み、白いシャツを羽織った男と狐面をつけた康本(紫がかった紺色のドレス姿)が差し向かっている。康本は子供っぽい仕草。無言でだだをこねる。対する男は、ちゃぶ台を両の拳でどん、どんと叩く。康本が少しの間をとって、突然手のうちから紙ふぶきをぱっと散らす。二人は立ち上がり、踊りだす。途中康本が男のシャツをはぎ取り、残る四名が登場、男を加えた五名で列を成すように連なって踊る。康本はその間、ちゃぶ台の下にもぐり、亀のように背中にしょって舞台中央を這う(甲羅をふんづけられながら)。康本がちゃぶ台から抜け出すと、三度目のソロ。やはり、ドレスを着て手足を露出していると、見えてくるものも全く違う。腕や脚を投げ出したり、わなわな震えさせたり、引き締まった文句なしの身体を、わざと粗雑に持て余すような演技が多い。

 六名いったん退場ののち再登場、康本を除く五名が体操風のダンスを踊る中、康本はそれに合わせたり外れたり。最後の最後に、口の端に人差し指をつっこみ、歯を磨くようにして乱暴に振る。間抜けな様子である。そのまま、ミラーボールの光溢れる下手に向かう。康本は、小鹿のてっぺんを口に加えて、持ち上げる。緑の幕が閉じる。
 幕から六名の手足がしつこく覗く。五名が出てきてひとしきり楽しく踊ったのち、並んで一礼。拍手。続いて康本が出てきて六人で礼。拍手。退場。


 愚直過ぎてやっぱり恥ずかしいけど、ど素人の見たチビルダミチルダはこんな感じ。
 長くなってしまった。感想はまた次回に。

« 新世紀エヴァンゲリオン|Top|VOCA展2008シンポジウム 『輪郭なき時代の絵画』 »

コメント

記録か記憶か

こういうメモって,リアルタイムにメモしてあるんですか?それとも記憶してあるんですか?
しょうもない質問ですが,教えてください。

コメントを有難うございます

 初めまして。

 ダンス自体あまり見慣れていないのですが、私の場合は記憶です。印象の薄かった部分が抜けたり、細かい間違いもあると思います。
 展覧会であれば、リアルタイムでメモですね。

ご教示ありがとうございます。

遅ればせながら,はじめまして。
私も,この前埼玉に康本さんを見に行ったのですが,ここまでメモなしで描写できるかと考えたら,まず不可能なので,すごいなと思って聞いてみた次第です。いや,でもショックですね,メモなしで,こんなにかけるとは。

いえ

埼玉ですか、知りませんでした。康本さん、色々な場所で活躍されていますね。
公式にリンクされているBCCKSの公演写真がとても充実していたので、時間がある時に間違い探しをしようと思います、自分の記憶が捏造される前に。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://ykringringring.blog111.fc2.com/tb.php/44-8d9c9351

Top

HOME

ユコ

Author:ユコ
芸術学科所属、
日本美術史を専攻します。

この人とブロともになる

ブログランキングへのリンクです。応援よろしくお願いします



今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ